たいらんの日本語教師ぐるぐるサバイバル

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今すぐ使える!「型」を使った「長所と短所」の書き方指導

志望理由書に書いたり、面接で聞かれたりする定番の質問「長所と短所」。

 
日本人は小学校以来、「○○ちゃんのいい所をほめよう!」とか「今学期がんばったこと」とか、何かと人や自分のことに思いを馳せる機会が多いように思います。
 
しかし、留学生の中には「そんなこと考えたこともないわ…」と途方に暮れる人も少なくありません。
 
この記事では、そんな「長所と短所」の書き方を留学生に指導する方法をご紹介します。
就職活動でES(エントリーシート)を書く時にも役立つかもしれません。
 

そもそも①何を測る問いなのか。

以前、「自分の悪い所なんて話したら落ちてしまうんじゃないか」と心配して、「短所はありません」と言ってしまう学生がいました。
しかし当然、悪い所がない人なんていません。
 
この質問が測りたいことは、次の点だろうと考えられます。
 
  1. 自分の良い所、悪い所を自覚しているか。もしくは、分析できているか。
  2. 面接で聞かれそうなことに対して、しっかり準備をしてきているか。
  3. 自分の言葉で自分のことを表現できる日本語力を備えているか。
 
2,3については、他の質問でもそうだろうとツッコミが入るかもしれません。
しかし、長所と短所なんて、普段の生活で、ましてや外国語で語ることなど、めったにありません。
そういう意味で、準備の本気度と日本語能力のどちらも測れる問いだと言えるでしょう。
定番ですから、優先的に準備しておくに越したことはありません。

  

そもそも②「長所」と「短所」とは?

留学生に「短所は?」と聞くと、「背が低い」とか「日本語が上手じゃない」とか言ってきます。
しかし、面接で答えるべき「短所」とは、このようなものではありません。
 
新明解国語辞典 第5版』で「短所」を引くと、次のように載っています。 
[人や物の]働きに伴って見られる、よくない面。[狭義では、性格の欠点を指す]

 

 
「働き」とは、「行動」のことです。
「良くない」とは、誰にとって良くないか。それは周囲の人や自分自身にとってです。
つまり、「短所」とは、「行動に伴って、周囲や自分自身が良くないと感じること」を指します。
「長所」はその反対に、「行動に伴って、周囲や自分自身が良いと感じること」と定義できます。
したがって、「普段の行動と、それに対する自分も含めた他人の反応」を考えることが、「長所」と「短所」を見つける近道です。
 

「長所と短所」のひねり出し方

それでは、具体的に「長所と短所」を考えてみましょう。
少しでも省エネでまとめたいなら、次のような方法がおすすめです。
 
  1. 「長所」を箇条書きで書き出す。
  2. 「長所」の具体的なエピソードを書く。
  3. 「長所」の「弱点」を考えて書く。
  4. 「弱点」の具体的なエピソードを書く。
  5. 「弱点」を克服するために心掛けていることを書く。
 
「長所は短所」という言葉もあるように、「長所」と「短所」は表裏一体です。
また、面接で話す以上、あまり悪い「短所」を話すメリットもないので、「短所」ではなく「長所の弱点」という表現を用いました。
 

1.「長所」を箇条書きで書き出す。

ブレインストーミングの要領で、キーワードでいいので、できるだけ思いつくことを書きます。ヒントは、人から感謝されたこと、よく言われることを思い出すことです。
 
例:整理整頓が習慣、……
 

2.「長所」の具体的なエピソードを書く。

いつ、どんな場面で、どんな行動をして、人からどんな反応が得られたか、について具体的に書きます。「行動」と「人の反応」を書くのがポイントです。
 
例:私は授業後、いつも教室の机やいすをきれいに戻してから帰ります。この前、先生から「ありがとう」と言われて、うれしくなりました。
 

3.「長所」の「弱点」を考えて書く。

「長所」の少し極端な所がないか考えて、短い言葉でまとめます。
 
例:一方で、少し物事に細かすぎるところもあります。
 

4.「弱点」の具体的なエピソードを書く。

2と同様、「行動」と「人の反応」を書くのがポイントです。自分が良くないと感じていることでもOK。
 
例:例えば、出かける準備に時間がかかり、そのせいで時々人を待たせてしまい、申し訳なく感じることがあります。
 

5.「弱点」を克服するために心掛けていることを書く。

ただ分析しただけで終わらず、それを克服したいと思っていることをアピールします。
 
例:そのため、人より早く準備を始めたり、事前にチェックリストを作ったりして、時間をかけすぎないように心がけています。
 
このような5段階の「型」を踏まえて書けば、「長所と短所」パッケージの完成です。
上の例をまとめてみます。
 

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私の長所は「整理整頓」が好きなことです。
例えば、授業後、いつも教室の机やいすをきれいに戻してから帰ります。この前は、先生から「ありがとう」と言われて、うれしくなりました。
ただ、一方で、少し物事に細かすぎるところもあります。
例えば、出かける準備に時間がかかり、そのせいで時々人を待たせてしまい、申し訳なく感じることがあります。
そのため、人より早く準備を始めたり、事前にチェックリストを作ったりして、時間をかけすぎないように心がけています。
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 いかがでしょうか。
 
他にもよくある例としては、
・慎重↔優柔不断
・自分の意思で決める↔頑固
・コミュニケーション得意↔一人の作業苦
など。
いろいろありますが、上の「型」に当てはめると、だいぶ考えやすいんじゃないでしょうか。
 
というわけで、この記事は以上です。
「長所と短所」を指導するときのお役に立てれば幸いです。
 
それでは、またじかいんど!^^